多様なテイストのバトルスの評判

2002年、イアン・ウィリアムス、デイヴ・コノプカ、ジョン・ステイナーそしてタイヨンダイ・ブラクストンの4人で結成されたバトルス。彼らの音楽活動については、タイヨンダイ脱退までは彼がほぼブレインとなって楽曲構成していたと言い、彼が脱退する前から製作にかかっていたアルバム「グロスドロップ」は、タイヨンダイ脱退後に全く再構築すると言う形を取って彼が手掛けたパートも一新することにしたため、完成までには紆余曲折あったと言います。

 

そんなタイヨンダイと最初に出会ったのはイアン。イアンの元のバンドが解散して以降はソロで活動するつもりだったのが、タイヨンダイの目に留まり、一緒に楽曲を世に出す目的で新たなバンドが結成されます。

 

そして、デイヴとジョンも加えた4人となり、バトルスの名前がついたのです。その後、実験的音楽やポストロックの新生のような形で評判となり、バンドは人気を博していきます。

 

この当時からプロデュース的役割を果たしていたのがタイヨンダイであり、彼の構築するイメージを目指して全員が音作りをしているような状態でした。それはそれでうまく進んでいるように見えたのですが、2010年に大きな転機が訪れます。

 

その当時すでに「グロスドロップ」の製作に入っていましたが、タイヨンダイはその楽曲全てにボーカルを入れることにこだわったのだそうです。今までインスト曲が多かったバトルスの音にとって新たな試みであったともいえるでしょう。

 

それを試した結果、思うような作品が出来上がらず、タイヨンダイの心はバトルスから離れていったという経緯があるとはメンバーのデイヴの話。そこから曲もバンドのあり方も1から考え直さなければならなくなりましたが、それが逆にチャンスになったとも言います。

 

従来はゴールが見えないままに形を作り続けていて、どこに向かっているのかわからなかったとのことですが、その道を1人で示していたタイヨンダイの脱退によって、3人で一緒にその方向性を探し求めることを余儀なくされたのです。

 

その試みは決して平坦ではありませんでしたが、3人で少しずつピースを組み立てていく作業に着手できるところに辿り着き、アルバム「グロスドロップ」でそのピースを3人の力で強力に組んで形にすることに成功したのです。

 

このように、「グロスドロップ」はバトルスに立ちはだかった壁にぶち当たった衝撃と、いかにうまくクリアするかという技の構築が詰まったアルバムです。

 

そして、その混沌と努力、また新しいものであるからこそのいい意味でのアンバランスさをうまく引き出したものが、そのアルバムのリミックス盤「ドロスグロップ」です。

さまざまなジャンルの融合を目指して楽曲作りを行うアメリカのエクスペリメンタルバンド・バトルス。彼らの繰り出すボーダレスな音楽性は、多方面のジャンルから高い評判を得ており、当初はポストロックやプログレの要素が強かったものの、オリジナルアルバム「グロスドロップ」あたりからよりポップで視野が広まったような自由な音楽性へとシフトしています。2012年4月にはリミックスアルバム「ドロスグロップ」を発売しました。

 

 

デビューから数年のバトルスは実験的でありポストロックの要素にエレクトロを差し込むような形で、リズムに関しても変拍子を随所に使用するなどといったテイストを強く持っていました。現在ではあまり多用されていませんが、突然のリズムの変化によるうねりのような感覚もバトルスの魅力の1つです。

 

しかし、そのような混沌とした変化あるリズムは、もともと正確にリズムを刻める実力がないと成立しません。正確無比にリズムを刻むことができてこそ、崩したときに均整が取れるのであって、下手がただ崩しただけではそれはやはりただの下手にすぎないのです。

 

そのリズムにおいて、バトルスの楽曲のうねりある正確なテンポでドラムを叩くのがジョン・ステニアーです。彼の性格かつ緻密なドラムさばきは、細かく同ピッチで刻むときには寸分の狂いもなく、また変拍子の際には混乱しない程度にバランスよくパターンを崩すという高度な技が必要です。ジョンが刻むリズムはまさに正確無比であり、ファンの評判も非常に高いものとなっています。

 

また、そのプレイスタイルが豪快なのもジョンのドラムの魅力。上から叩くように激しく打つのにその音は繊細で、シンバルに関しては細かいビートを狂いなく打ち続けています。この正確さがバトルスのカオティックでエクスペリメンタルな音楽をきちんと統制の取れたものに仕上げているのであって、ただのごちゃまぜにならずに見事に1つの音楽として昇華させることが可能になっているのです。

 

そして、初めてジョンのドラムセットを見る方が一度は目を疑うのが、クラッシュシンバルの位置の高さ。通常はドラマーのひじ上程度の位置に収まっていい感じに打つことができるシンバルが、ジョンのドラムセットではその遥か上、手を伸ばして届くか届かないかの位置です。

 

そのハイポジションから豪快にスティックを振り下ろす姿は、ライブパフォーマンスとしてのバトルスの魅力の1つであり、ファンの間では語り草になっています。そして、そのような特殊な組み方をしているドラムセットから繰り出されるのは、緻密で細かいリズムワークなのです。

バトルスが自らゆかりの深いアーティストまたはリスペクトするアーティストたちを一堂に会して製作したリミックスアルバム「ドロスグロップ」は、バトルスの再構築のきっかけとなった「グロスドロップ」を全曲外部アーティストの手腕でリミックスしたものです。

 

「ドロスグロップ」はまさに「グロスドロップ」なしでは成立していないアルバムであり、アルバム名をもじっただけのネーミングであるとおり、もう1つの世界のアルバムのような形となっており、各音楽ファンからの評判も高いものとなっています。

 

そんな「グロスドロップ」を製作した当時は2010年から2011年。そしてリリースが2011年4月27日となるわけですが、その直前、日本で行われる音楽フェス「SonarSound Tokyo2011」にバトルスが出演することとなりました。

 

メンバー全員、日本で起きた大惨事・東日本大震災直後に日本に訪れることにためらいがあったと言います。その当時の心境をメンバーの1人であるイアン・ウィリアムスが語っています。

 

震災直後ということで来日に抵抗があったとのことですが、日本側からぜひというオファーがあり快諾したとのこと。その状況を、アメリカで2001年9月11日に起きた同時多発テロ事件の後に重ね合わせてイアンは語ります。

 

9.11の後も、アメリカではさまざまなイベントなどが随所で行われたそうです。絶望と不安、混沌の中でもそのように周囲が一体となることによってさらなるパワーが生まれ、連帯感が増したという9.11の経験を思い出し、日本でも絶望から立ち直るためにたくさんのイベントやパーティを行えば人々のつながりがより強化し、希望につながるのではと考えたのです。そのためにも、あのような状態の日本だからこそライブを行って人々を盛り上げていこうと思ったのだそうです。

 

また、この時期はバトルスにとっても大きな転機を迎えており、メンバーのタイヨンダイ・ブラクストンの脱退によって再構築を余儀なくされたアルバム「グロスドロップ」の製作と、とりあえず作ってみた音源をいかにしてライブで再現するかという課題を持っていました。

 

バンドとしても混沌とした時期であったにもかかわらず、見事なパフォーマンスで日本のオーディエンスを魅了し、さらにタイヨンダイ在籍時の過去の曲は全て封印してのライブという挑戦も行いました。

 

このようなバンドの過渡期に日本でパフォーマンスをやらなければと思ってもらえたことは日本のファンにとってはありがたい話ですし、バトルスとともに成長を遂げようという気持ちにいたることができたかもしれません。

メンバー脱退後の楽曲再構築が課題となったバトルスのオリジナルアルバム「グロスドロップ」は、その混沌とは裏腹にバトルス史上大傑作と言われるほどの評判となりました。その一因としては従来よりさらに自由になった音楽性と、外部からのゲストボーカルが吹き込む新たなテイストによってより大きな広がりを持つことができたためといえます。

 

そのリミックス盤が「ドロスグロップ」ですが、さまざまなジャンルのサウンドを操るアーティストたちが手掛けたリミックス楽曲はそれぞれに個性を放っているだけではなく、テクノやダブ、パンクといった要素を多様に織り込むことによってさらなるコアな部分と内に秘める混沌を浮き彫りにする形となっています。

 

そのような形になったことは、ひとえにオリジナルである「グロスドロップ」がポップは広がりとともに混沌を秘めたものであったからであり、その内面性をより引き出す音楽性を持ったアーティストが「ドロスグロップ」に集結したのです。

 

つまり、土台である「グロスドロップ」が持つ性質から混沌としたものであるということで、メンバーがこのオリジナルを手掛けた心境や環境も模索や葛藤が計り知れなかったことがうかがえます。

 

そんな中、「グロスドロップ」がリリースされる直前の2011年4月3日、バトルスは日本の音楽フェス「SonerSound Tokyo 2011」の2日目に出演することとなります。このとき、日本では未曾有の大災害をもたらした東日本大震災が起きた直後であり、メンバーは日本に来ることをためらったといいます。その際の心境を、バトルスメンバーのデイヴ・コノプカが語っています。

 

デイヴいわく、自らのバンドを「バカなロックバンド」と評しており、そのようなバンドが今大変な状況にある日本に来てプレイを行うことは失礼に当たると考えたといいます。

 

しかし、当時バトルス自体もバンドの屋台骨であったタイヨンダイ・ブラクストンが抜けたことによって混迷を極めており、そんな中で苦心惨憺して「グロスドロップ」を仕上げた直後だったのです。そのような苦しい時期であり混乱をきたしていながらも懸命に前に進む状況が、バンドの現在と日本の状態に重なったと言います。

 

そのため、どこか共通点を感じて来日を決意し、結果最高のパフォーマンスを行った結果日本のオーディエンスからも高い評価を受けることとなりました。

 

震災によって元気をなくしていた日本と自らの境遇を重ね合わせ、そこでライブを行うことで日本に貢献できたと感じたようで、また日本のファンたちも同様にバトルスから元気を分け与えてもらうことができました。

バトルスが3人となった後にリリースされた「グロスドロップ」。バトルス史上でも名盤とされるこのアルバムは、傑作として広く全世界に受け入れられ、評判を呼びました。このアルバムはメンバーのタイヨンダイ・ブラクストン在籍時から製作されていたものですが、途中で脱退となり、メンバー3人が1から構築しなおしたという経緯があります。

 

その経緯の中で、どのようにして楽曲を製作していくかという葛藤と、より自由な音楽性を追求できるようになったという解放感が入り混じったものとなっており、逆にその不安定感に成り立つ音の輝きがバトルスの新たな魅力として認識されたのです。

 

そのような名盤となった「グロスドロップ」を、さらに多くのリミキサーの手によって新たに再構築しようという試みで製作されたのが「ドロスグロップ」であり、バトルスメンバーの思惑どおりさまざまなジャンルの音楽テイストが絶妙なバランスで織り交ぜられたものとなっています。

 

これにより、オリジナルと別物になるどころかさらなる輝きをもって世に放たれることとなり、「バトルスの美学」とまで言わしめるアルバムに仕上がっています。

 

では、バトルスがオリジナル「グロスドロップ」を再構築してもう1つの名盤を作ろうとした思惑は何だったのでしょうか。

 

もともとリミックスとは音楽業界において多用されている企画であり、あらゆる音楽ジャンルで用いられている手法です。このさじ加減によって、オリジナルとは全く別のジャンルのものになったり、またテイストが若干違ったものになったりと、そのリミキサーごとの色が強く出るものとなります。そのさじ加減は手掛けるアーティストによっていろいろであり、他人のものを大幅に自分の方に寄せてしまうか、オリジナルを尊重しながらアレンジを加えていくかはリミキサー次第ということになります。

 

バトルスは、このリミックスという作業において、必ずしも別物にしてくれと各アーティストに頼んだわけではないといえます。もともとバトルス自体がロックやテクノ、エレクトロにダブといったジャンルにはこだわらない音楽製作を行っていることもあって、リミックスを外部に依頼したからといって「別物になる」という概念自体がなかったことも考えられます。

 

また、バトルス自らリワークしたものであると言われるとおり、「ドロスグロップ」に起用したリミキサーたちは全てメンバー自ら選出したそうです。だからといって似通った仲間たちだけを集めたわけでもなく、各ジャンルの音をうまく融合させた音楽作りを行っている気鋭のアーティストを厳選し、別物にもならずただのアレンジ違いにもならないという絶妙な融合感を構築するのに成功したのです。

実験的、前衛的でありながらボーダレスな音楽ジャンルとテイストの融合を目指すバトルスが放つ自身オリジナルアルバムのリミックス盤「ドロスグロップ」。このアルバムには、アメリカでリリースされた4枚の12インチアナログ盤には収録されていない楽曲が含まれています。

 

それは、日本のみならず世界を股にかけて挑戦的な音楽とパフォーマンスを展開するEye Yamantaka・山塚アイが手掛けるリミックス曲です。
もともとオリジナル盤である「グロスドロップ」には、バトルスのボーカル担当でありブレイン的立場でもあったタイヨンダイ・ブラクストンが脱退したことにより、残った3人で新たにボーカルなしの時点から立ち返って作り直したという経緯があります。その中で、今まで何となくあった音楽テイストの垣根がなくなっていって自由になったとバトルスメンバーがコメントしているとおり、仕上がりは従来のバトルスサウンドから重圧が解き放たれたようなものとなっています。

 

その立役者となったのは、外部から迎え入れたボーカリストたち。アメリカで活動するアーティストを中心にチョイスされましたが、その中で日本国内だけではなく世界に向けて音楽活動を発信しているボアダムスのボーカル、山塚アイ(アルバム参加時の名義はEye Yamantaka)も含まれていました。

 

攻撃的なボーカルと過激なパフォーマンスで知られていた山塚ですが、彼が繰り出す音楽性は非常に高く評判もよいもので、ノイズロックの中にもエレクトロな音やターンテーブルを駆使したDJプレイなどを融合させ、そのコアでカオティックな要素がバトルスにも受け入れられたのです。
そして「ドロスグロップ」ではオリジナルでボーカルとして参加した「Sundome」を自らリミックスすることとなりました。攻撃的な一面はばとルスサウンドに新たなスパイスを注入するのに成功しています。

 

音楽活動を行うに当たって名義を多様に変えているのが山塚の特徴であり、「グロスドロップ」ではEye Yamantakaとなっていますが、その他ヤマタカEYEや、EYEとのみ名乗る場合などさまざまです。これは、山塚が参加する音楽ユニットや企画が膨大かつ広範囲にわたるためとも考えられ、バンド時やDJ時、また他ユニットに参加する時などで適宜使い分けているようです。

 

日本では特に過激なパフォーマンスを行うことでも知られており、過去には警察沙汰すれすれの行為を行い各ライブハウスから出禁を食らうほどであったと言いますが、ボアダムス始め国内外で多岐にわたる活動を行うに当たってその攻撃性はなりを潜めていき、音楽においてもナチュラルな民族テイストを取り入れたものに変化しています。

バトルスの最高傑作「グロスドロップ」をさらに最高のものに再構築・昇華したと評判の「ドロスグロップ」。2012年のリリースをきっかけとして、「ドロスグロップ」スペシャルサイトが開設されています。

 

このサイトでは、各曲対する紹介や感想のコメントを音楽関係者など多方面から集めており、曲選びやレビューとしての参考になるように構成されています。アーティストからレコード店のスタッフにまでその声は波及しており、音楽に造詣の深い方々からのコメントを集めています。

 

そのほかに興味深いのは、「あなたは何バトルス!?」と銘打ったコーナー。ここで何が行われるかというと、設定された質問に答えていき、その内容によって「ドロスグロップ」に収録されているリミックス曲の中で自分に最適なものがわかってしまうという診断ゲーム。この遊び心が何ともお茶目で、つい挑戦したくなってしまいます。

 

質問はルートによっても違いますが、だいたい3問という簡単なもの。それに順番に答えていくだけで、自分の好みや気分にぴったり合ったものが見つかってしまいます。アルバムを片手に挑戦してみて、診断された曲を選曲すれば思わず「なるほど!」と膝をたたいてしまうかもしれません。

 

また、診断後に曲名が表示された後は、バトルスメンバーから曲ごとのコメントも用意されています。その曲にこもったメンバーの想いや解説を読みながら曲を聴くのも一興です。

 

アルバム購入前にこの診断を受けてみて、自分に合った曲がわかったらまず試聴してみるのもいいかもしれません。何せ自分に一番合った曲を診断してくれているわけですから、肌に合わないわけはないとは言いながらも、実際に購入するか否かのきっかけにはなり得ます。診断された曲をストリーミング配信で聴いてみて、これだと思ったらぜひ購入してじっくり聴いてみましょう。

 

そのような使い方もこのキャンペーンサイトの趣旨であり、また診断内容と各音楽関係者のコメントを併せて読むことによって、購入前でも曲に対するイメージを膨らませることができます。そして、この音楽関係者コメントはTwitterやFACEBOOKで共有することもでき、さらに自分の周りに「ドロスグロップ」中毒者を増幅させることにもつながります。

 

この「あなたは何バトルス!?」キャンペーンは、「ドロスグロップ」に収められている曲の多様性を同時に示したものともなっており、さまざまな好みにマッチする曲が勢ぞろいしていることを証明しているともいえます。
どのようなジャンルの音楽ファンも魅了してしまうということです。

バトルスのアルバム「グロスドロップ」を数々の有名アーティストがリミキシングした「ドロスグロップ」は、4枚の12インチアナログ盤としてアメリカでリリースされた後、日本先行でそれらをまとめたCDアルバムとして発売されています。

 

これら4つのうち一番後発でリリースされている第4弾には、満を持してバトルスとゆかりの深いエクスペリメンタルサウンドリミキサーが集結。聴きごたえがあると評判の3曲が収められています。

 

第4弾としてリリースされたのは「Ice Cream」「Rolls Bayce」「My Machines」。それぞれのリミックスを「Ice Cream」ではバトルスと同じニューヨークを拠点とするオルタナバンド・Gang Gang DanceのBrian Degraw、「Rolls Bayce」はバトルスと同じレコードレーベルで活動するHudson Mohawke、「My Machines」はニューヨークで活動していたダンスパンクバンド・LCD Soundsystemに参加していたPatrick MahoneyとそのオリジナルレーベルDFAのプロデューサーであるDennis McNanyのタッグで行っています。

 

彼らはポストロックやエクスペリメンタル、ダンスパンクといったテイストにおいてバトルスと相容れるものを持っている面々であり、絶大な信頼のもとに「ドロスグロップ」のリミキサーとしてオファーを受けたものです。

 

Brian Degraw (Gang Gang Dance)
アメリカ・ニューヨークのオルタナバンドであるGang Gang Danceは、ロックにおけるさまざまな要素を取り入れたサウンド展開を行うバンドです。ポストロック・ノイズロックといったものからサイケやエレクトロニカ要素まで柔軟に織り交ぜた実験的なサウンドが特徴であり、カオティックでボーダレスな姿勢はバトルスの音楽製作と重なるところを有しています。

 

このバンドでキーボード・エフェクトを担当するBrian Degrawが繰り出すうねりのあるサウンドはバトルスがこのリミックスに求めるものの1つであるカオスをより絶妙に表現しうるというベストな人選です。

 

Hudson Mohawke
スコットランド出身のDJ・プロデューサーであるHudson Mohawkeは、イギリスのエレクトロニカレーベルWARPで活動するアーティストです。このレーベルは、まさにバトルスが所属しているものであり、「ドロスグロップ」もこのWARPよりリリースされています。

 

バトルスのレーベルメイトとして交流も深い彼であるからこそスムーズに起用が決まったとのことで、よりエレクトロニカルなサウンドを提供しています。バトルスサウンドとの融合が心地よい仕上がりです。

 

Patrick Mahoney & Dennis McNany
Patrick Mahoneyは、もともと James MurphyのソロプロジェクトであるLCD Soundsystemのライブ時のバンドメンバーであり、ドラマーとして活動していました。Dennis McNanyは、LCD Soundsystemの独自レーベルとして立ち上がったDFAにて辣腕をふるう名プロデューサーです。パンクロックテイストとダンスサウンドを融合させたダンスパンクを普及させた立役者であり、彼らのテイストの融合でバトルスサウンドにさらなる可能性を吹き込んでいます。

バトルスの2011年の名盤「グロスドロップ」のリミックス盤「ドロスグロップ」には、そうそうたるメンバーがリミキサーとして名を連ねています。テクノやエレクトロ、ヒップホップにダブステップといった各ジャンルにおいて第一線にありながらも、ジャンルの枠を超えたボーダレスな音作りや実験的な構成など幅広く音楽をとらえたアーティストが多く、バトルスの根管であるエクスペリメンタルなテイストにさらに華を添える形となっています。

 

「ドロスグロップ」は、12インチアナログ盤として「グロスドロップ」の全曲を4つに分けてリリースされていますが、その第3弾はテクノやエレクトロの雄が集結し、メジャーかつスタンダードではなくさまざまな音楽要素を取り入れた展開となっています。

 

この第3弾に収録されている曲は「Inchworm」「Toddler」「Dominican Fade」の3曲であり、それぞれリミックスを手掛けるのは「Inchworm」はコアなテクノシーンで名を馳せるSilent Servant、「Toddler」は多様な音楽経験から繰り出すエレクトロサウンドが評判を得ているKangding Ray、そして「Dominican Fade」はエレクトロ界の第一線の第一人者であるQlusterというラインナップ。エレクトロやテクノサウンドの波がこれら3曲をカオティックに彩ります。

 

Silent Servant
アメリカで活躍するテクノDJであるJohn Juan Mendezのソロプロジェクト。アメリカ西海岸のアンダークラウンドテクノシーンを盛り上げてきた第一人者であり、うねりがありながらミニマルなサウンドでグルーヴそのものを体で感じられる音作りを行います。
コアなUKテクノレーベル「Sandwell District」よりカオティックなダブサウンドをリリースしており、それは深層に入っていくような宗教的なテイストを求めていたバトルスの意図にはまるものでした。

 

Kangding Ray
フランスに生まれ、現在ドイツはベルリンで活動を行うDavid Letellierのソロプロジェクト。もともとギターやドラムといった楽器のプレイヤーであり、さまざまな現場で音を鳴らしてきた彼が、多彩な音楽ジャンルに触れて行きついたのがエクスペリンメンタルテクノです。
ギターやベースのラインをループさせながら、どこか混沌とした雰囲気を醸し出すサウンドは絶妙なバランス感の上に成り立っており、ダークでコアな空気を造りだします。そのテイストを取り入れたいバトルスの希望が叶い、楽曲もダークネスな仕上がりになっています。

 

Qluster
1970年代にKlusterとしてドイツの音楽シーンに登場し、その後メンバー脱退を経てClusterとなり、現在はオリジナルメンバーであるHans Joachim Roedeliusと若手のOnnen Bockのコンビにより活動を行っています。
歴史深い「クラスタ」存在は、バトルスにとって非常に大きいものであり、バトルスの実験的かつミニマルなサウンド展開はクラスタからインスピレーションを受けていたと言わしめるほどです。
今回のコラボが実現したのはバトルスにとって大きな収穫となりました。

3人となった新生バトルスが打ち出した名盤「グロスドロップ」を、さまざまなアーティストも手腕によってリミキシングした作品が「ドロスグロップ」です。

 

オリジナルの評判は高く、従来のバトルスの実験的な姿勢を残しながらも、プログレ要素からの脱却が図られたような印象も受け、ポストロックといったジャンルには必ずしも収まらない自由なサウンドを展開した作品です。

 

これをさらに、多様なジャンルや音楽性を持ったリミキサーによって全曲にアレンジを加えられた「ドロスグロップ」には非常にたくさんの色が詰まっており、リミキサーそれぞれの個性を取り入れながら、「グロスドロップ」が持つアンバランスさや危うさを昇華して改めてバトルスの個性として再構築しています。

 

本国アメリカで12インチアナログ盤としてCDに先駆けて4枚にわたってリリースされた「ドロスグロップ」のうち、第2弾の楽曲は「Futura」「White Electric」「Africastle」の3曲。

 

そしてそのリミックスを手掛けた気鋭のアーティストは、「Futura」にはダンスミュージック界において敏腕プロデューサーとして評価の高いAlchemist、「White Electric」はアメリカのヒップホップ界で活躍するShabazz Palaces、「Africastle」にはベースミュージック・ダブステップレーベル「Hyperdub」をけん引するKode9をリミキサーに迎えています。

 

Alchemist
アメリカ・ロサンゼルスを中心に活動を行っている音楽プロデューサーであり、DJとしても名を馳せるアーティスト。アメリカで活躍する数々のアーティストのプロデュースを行って評判を得ているほか、自らもシングル・アルバムをリリースしています。
USヒップホップ界の雄・エミネムとも関わりが深く、その才能を認められています。自身のアルバムにも多数のゲストを迎え、ボーダレスな活動を行っており、バトルスとのコラボもそのような動きからつながっていきました。バトルスサウンドに重厚なブラックミュージック色を取り入れています。

 

Shabazz Palaces
アメリカ・シアトルで活動する2人組ヒップホップユニット。ヒップホップというカテゴリーでありながら実験的なサウンドを打ち出しており、サンプリングやエレクトロな音だけでなくパーカッションなども多用して重厚な音を作りだしています。
とはいえ、構成は複雑なものではなくシンプル。変拍子なども取り入れ、ヒップホップの枠にとらわれないながらも本来のブラックミュージックのルーツを感じさせる楽曲が特徴です。

 

Kode9
ダブステップの成り立ち、発展に大きく貢献したアーティスト、スティーブ・グッドマンのソロプロジェクト。ダブステップの代表的レーベル「Hyperdub」を運営しており、ダブサウンド、ベースミュージックを支えています。
ハイパーダブにヒップホップやテクノ要素などを取り入れた実験的サウンドでカオティックながら幅広い音楽ジャンルのファンに支持されています。