多様なテイストのバトルスの評判

バトルスの2011年の名盤「グロスドロップ」のリミックス盤「ドロスグロップ」には、そうそうたるメンバーがリミキサーとして名を連ねています。テクノやエレクトロ、ヒップホップにダブステップといった各ジャンルにおいて第一線にありながらも、ジャンルの枠を超えたボーダレスな音作りや実験的な構成など幅広く音楽をとらえたアーティストが多く、バトルスの根管であるエクスペリメンタルなテイストにさらに華を添える形となっています。

 

「ドロスグロップ」は、12インチアナログ盤として「グロスドロップ」の全曲を4つに分けてリリースされていますが、その第3弾はテクノやエレクトロの雄が集結し、メジャーかつスタンダードではなくさまざまな音楽要素を取り入れた展開となっています。

 

この第3弾に収録されている曲は「Inchworm」「Toddler」「Dominican Fade」の3曲であり、それぞれリミックスを手掛けるのは「Inchworm」はコアなテクノシーンで名を馳せるSilent Servant、「Toddler」は多様な音楽経験から繰り出すエレクトロサウンドが評判を得ているKangding Ray、そして「Dominican Fade」はエレクトロ界の第一線の第一人者であるQlusterというラインナップ。エレクトロやテクノサウンドの波がこれら3曲をカオティックに彩ります。

 

Silent Servant
アメリカで活躍するテクノDJであるJohn Juan Mendezのソロプロジェクト。アメリカ西海岸のアンダークラウンドテクノシーンを盛り上げてきた第一人者であり、うねりがありながらミニマルなサウンドでグルーヴそのものを体で感じられる音作りを行います。
コアなUKテクノレーベル「Sandwell District」よりカオティックなダブサウンドをリリースしており、それは深層に入っていくような宗教的なテイストを求めていたバトルスの意図にはまるものでした。

 

Kangding Ray
フランスに生まれ、現在ドイツはベルリンで活動を行うDavid Letellierのソロプロジェクト。もともとギターやドラムといった楽器のプレイヤーであり、さまざまな現場で音を鳴らしてきた彼が、多彩な音楽ジャンルに触れて行きついたのがエクスペリンメンタルテクノです。
ギターやベースのラインをループさせながら、どこか混沌とした雰囲気を醸し出すサウンドは絶妙なバランス感の上に成り立っており、ダークでコアな空気を造りだします。そのテイストを取り入れたいバトルスの希望が叶い、楽曲もダークネスな仕上がりになっています。

 

Qluster
1970年代にKlusterとしてドイツの音楽シーンに登場し、その後メンバー脱退を経てClusterとなり、現在はオリジナルメンバーであるHans Joachim Roedeliusと若手のOnnen Bockのコンビにより活動を行っています。
歴史深い「クラスタ」存在は、バトルスにとって非常に大きいものであり、バトルスの実験的かつミニマルなサウンド展開はクラスタからインスピレーションを受けていたと言わしめるほどです。
今回のコラボが実現したのはバトルスにとって大きな収穫となりました。