多様なテイストのバトルスの評判

2002年、イアン・ウィリアムス、デイヴ・コノプカ、ジョン・ステイナーそしてタイヨンダイ・ブラクストンの4人で結成されたバトルス。彼らの音楽活動については、タイヨンダイ脱退までは彼がほぼブレインとなって楽曲構成していたと言い、彼が脱退する前から製作にかかっていたアルバム「グロスドロップ」は、タイヨンダイ脱退後に全く再構築すると言う形を取って彼が手掛けたパートも一新することにしたため、完成までには紆余曲折あったと言います。

 

そんなタイヨンダイと最初に出会ったのはイアン。イアンの元のバンドが解散して以降はソロで活動するつもりだったのが、タイヨンダイの目に留まり、一緒に楽曲を世に出す目的で新たなバンドが結成されます。

 

そして、デイヴとジョンも加えた4人となり、バトルスの名前がついたのです。その後、実験的音楽やポストロックの新生のような形で評判となり、バンドは人気を博していきます。

 

この当時からプロデュース的役割を果たしていたのがタイヨンダイであり、彼の構築するイメージを目指して全員が音作りをしているような状態でした。それはそれでうまく進んでいるように見えたのですが、2010年に大きな転機が訪れます。

 

その当時すでに「グロスドロップ」の製作に入っていましたが、タイヨンダイはその楽曲全てにボーカルを入れることにこだわったのだそうです。今までインスト曲が多かったバトルスの音にとって新たな試みであったともいえるでしょう。

 

それを試した結果、思うような作品が出来上がらず、タイヨンダイの心はバトルスから離れていったという経緯があるとはメンバーのデイヴの話。そこから曲もバンドのあり方も1から考え直さなければならなくなりましたが、それが逆にチャンスになったとも言います。

 

従来はゴールが見えないままに形を作り続けていて、どこに向かっているのかわからなかったとのことですが、その道を1人で示していたタイヨンダイの脱退によって、3人で一緒にその方向性を探し求めることを余儀なくされたのです。

 

その試みは決して平坦ではありませんでしたが、3人で少しずつピースを組み立てていく作業に着手できるところに辿り着き、アルバム「グロスドロップ」でそのピースを3人の力で強力に組んで形にすることに成功したのです。

 

このように、「グロスドロップ」はバトルスに立ちはだかった壁にぶち当たった衝撃と、いかにうまくクリアするかという技の構築が詰まったアルバムです。

 

そして、その混沌と努力、また新しいものであるからこそのいい意味でのアンバランスさをうまく引き出したものが、そのアルバムのリミックス盤「ドロスグロップ」です。